コーヒーのお便りVol.7 〜ペルーと僕〜

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コーヒーのお便り

コーヒーのお便り Vol.7

ペルーと僕

「ペルーには全てがある」
そう僕に教えてくれたペルー人の名前を僕はもう忘れてしまった。
でも、その言葉の意味を僕は生涯忘れないだろう。それほどまでにペルーを好きになってしまったのだ。

 僕がペルーについたのは2019年の12月、隣国のエクアドルから移動に移動を重ねバスを乗り継いで約35時間。アンデス山脈の麓の街、ワラスにたどり着いたのだった。町といっても、標高は既に3000mを超え、身を刺すような寒さと空気の薄さが僕を熱烈に歓迎した。

 メキシコで出会った旅人から「アンデス山脈は最高だ」と熱弁され、半信半疑でアンデス山脈までやってきたのだ。

 そして僕はテントと食料を背負えるだけ背負って、電気も電波もないアンデス山脈を4日間ただ歩いたのだった。この時間の中で僕はどれだけの景色を目にしたのだろうか。
気づいたら僕は、その後出会う旅人全てに「アンデス山脈は最高だ」と熱弁するようになっていた。

 

 「何か困ったことがあるのか?」

 町を歩いているとそんな日本語が聞こえてくる。ペルーには、日系に方が多く住んでおり、日本語を話せる方も多い。ペルーに着いた初日だけでも僕は二人の方にバスの乗り方や、街の様子を教えていただいた。異国の地で、母国の言葉を聞くという体験はなんとも言い難い安心感がある(もちろんそれと同時にうさんくささも感じるのだが)。

 ペルーの第二の首都であるクスコは旅人が住みたい街ランキングで常に上位に入る。
例に漏れず僕もこの街に惚れ込んだ。石畳の道が迷路のように入り組み、建造物は軒並みアンティーク調で統一されている。その中に南米らしい陽気な音楽、そして伝統の民芸品を身に纏った住民たちが見事に調和している。足を踏み入れた瞬間から僕はもうこの街に惚れ込んでしまい、出会った旅人たちと家を借り、2週間もクスコの街に住むことにした。

 中でもお気に入りの場所は市場だった。ちょっとしたテーマパークほどの広さで、屋台が迷路のようにひしめき合っている。自然光があまり届かず、薄暗い空間内で飛び交う大声、漂う不思議な香り、そしてどこからか聞こえるラジオの音。ホグワーツに入学した時のハリーポッターはおそらくこんな気分なんだろうと、その時なぜか想像した。

 「旅って普段何をするんですか?」
 日本で旅の話をするとこういう質問をたまに投げかけられる。
そんな時に思い出すのはいつだってペルーの日々だ。
 僕がペルーでしたただ唯一のことは、日常に溶け込んでいくことだけだった。「日本人」という自分が、少しずつ街に受け入れられ、溶け込んでいく感覚が何よりも楽しく心地よい。
 お決まりのお店でお決まりの店員さんと挨拶を交わすようになる、帰り道を覚え、寄り道をする余裕ができ、また新たな道を知る。気づいたら自分が見ているその風景に、自分自身が溶け込んでいく感覚。それこそが旅の醍醐味だと僕は思う。

 ペルーを旅をして僕はまた旅の楽しさを知ったのだ。

 

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