コーヒーのお便り Vol.9 〜エクアドルと僕〜

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コーヒーのお便り

コーヒーのお便り Vol.9

エクアドルと僕

 今思えば、地獄の南米移動のスタートはここからだったのかもしれない。
南米の移動は基本的にはバスを使う。ただのバスではなく、”超”長距離だ。旅の後半になると10時間移動は当たり前、20時間を超えてきて、やっぱりこんなもんだろ、と感覚が麻痺してくる。
 僕がコロンビアを出発し、エクアドルの首都キトに着いたのは、バスに乗ってから23時間ほど経過した後だった。
 コロンビアからエクアドルへ抜ける国境は非常にややこしい。パスポートチェックを受ける際に、室内に持ち込めるのはパスポートのみで、リュックなどを持っていくことができない。したがって、入り口付近の大量の人がいる場所に荷物を置いておかなければならない。仲間がいれば代わりばんこに見張りを立てて行くことができるのだが、一人旅の場合は盗難の心配をしながらヤキモキしながら列に並ぶ必要があるのだ。

 ガラパゴス諸島を知っている人は多いが、それがエクアドルにあることを知っている人は少ない。僕もそうだった。
 ガラパゴス諸島はエクアドルの西に位置し、飛行機でしかいくことができない。独自の生態系が築かれ、野生動物の楽園と言われている。一度は行ってみたいガラパゴス諸島、僕はそのツアー料金を知っていくのをやめた。何をするにせよお金がかかるのだった。
 僕は旅の資金をコロンビアのカジノでほとんど使ってしまったので、ガラパゴス諸島を諦めざるを得なかった(今でもこのことを悔やんでいる)


 エクアドルで一番の思い出といえば、ケチャップ強盗に合ったことだ。南米を旅する人で、ケチャップ強盗を知らない人はいないほど、有名な手口だ。背後から近づき、ケチャップを服にかける。そして仲間が近づき、「汚れているから拭いてあげる、水場を教えてあげる」と人気のないところに連れ込み、集団で囲み、金品を盗むのだ。
 キトの治安が最近悪化しているという情報を入手していた僕は、必要最低限のお金と携帯だけを持って、街を歩くように心がけていた。

 観光初日、歩いて30分もしないうちに声をかけられた。「服が汚れている」と。よくみてみると、背中からズボンまで変な異様な悪臭を放つ液体がこびりついていた。
ついにきたか。そう思った僕は興味本心から拭いてもらうことにした(どこにも行かず、その場で)。
 するとどこからともかく仲間が3人ほどやってきて体を吹き始めたが、盗める物がないと気づいた途端、何も言わずに去っていった。液体はアンモニアのような強烈な悪臭を放っていた。どうせならケチャップにしてほしいと心から思った。なんとか汚れを落とし、また歩き出すと目の前の西洋人の背中にもべっちゃりと同じ液体がかけられていた。僕は気づかないフリをした。

 エクアドルは近代的な南米を感じる最後の国となる。南に行くとペルーやボリビアがあり、
アマゾン川やジャングル、遺跡など一気に民族的な文化が広がる。
映像では見たことあるあの世界が確実に近づいている。早くその世界に飛び込んでみたい。気づいたら僕は足を早め、また20時間は降りることができないバスに乗り込んだのだった。


次の国ペルーを目指して。

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