「暁の会」という熱い場所に行って、空気を凍らせた話。 -騙されて、着いた先には、ほにゃららら-2

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あるいは全力のことばたち。



前回のあらすじはこちらから。



そんなこんなで、



明らかに住む世界が違う人たちの巣窟へ、

どこの誰でも無い

ただのニートが突撃することとになった。





トビラがちゃり



受付:あ、どうも。



キクチ:あ、、、あの、た、タイラくんが後日払うということは可能ですか?


受付:え。。。あぁ、はい。かしこまりました。ではそのようにいたします。
   ではこちらをどうぞ


タイラって誰?という怪訝な顔されながらも、
パンフレットが渡される。


そのパンフ





・・・・
なんじゃこの世界。。。
暑い。。。暑すぎる。。。

さっき話してたのって元議員さんかい。。。


というかもう、いろいろ胡散臭い。。。。



そんなことを一ミリも出すことは許されず、


ありがとうございます!
なんて言いながら。






受付:こちらの席へどうぞ。




会場には全部で30人程度の参加者がいた。
もちろんほぼ全ての人がスーツをビシッと決めて、背筋を伸ばしながら
講演をしっかり聞いていた。



テーブルがいくつか用意されてあり、
各テーブルに3〜4人の参加者が座っているようだった。




僕が案内されたのは、男性、女性一人ずつしかいないテーブルだった。




僕が席に着くと、
講演中だったこともあり、

軽い会釈を交わす。


明らかに場違いな僕、


・・・だってジャージだもん。


さっきまで2アウトよー!!
バッタ勝負ー!!



とかさけんでたんだよ。



そんな僕を見て、
机のメンバーは、

一瞬怪訝な顔を見せるが、
とりあえずの笑顔を見せてくれた。



その笑顔が怖かった。



講演内容は、なんだかもう、熱い話だった。

今この社会は面白くない!
変えて行こう!そのため今日から何をするか!
志を持って!価値を創造して!
あーだこーだ!



。。。何言ってるんだろうこの人。




絶対零度並みに冷えている、

というか怯えている僕を笑顔にするには


彼の熱意はどうやら足りなかったらしい。



気づいたら、スマホで、

「長野、天気」と調べている僕がいた。



講演が終わり、拍手喝采に包まれる。




司会者の人がとてつもなくハイテンションで、

僕をさらに冷えさせた。


こんな感じ



いやぁーー!!みなさん!どうでしたか!?
身の引き締まるお話でしたね!

私も、今日ここから、
一人の志を持つ人間として、
新たなる価値の創造!いや、私たち同じ志を持つ同志として、
「競争」ではなく、「共創」、
同志として、共に新しい価値を創っていきましょう!!







・・・・誰がうまいこと言えと?



てか何言ってんのこの人?




そんなことをひそひそ思っていたら、

次のプログラムが始まるまでの時間、


フリートークの時間となった。




・・・・ついにきてしまったこの時間。。。




いいか。ありのまま起きたことを話すぞ。





目の前のおふた方が、
話し出す。



いやぁ、いいお話でしたねぇ。
ほんと、自分たちもまだまだですね。
もっと価値を創り上げていきたいですね。
さすが、としか言いようがないですよー。



なんてひたすらわいわい話しているのを、



本日3打席1安打、(ツーベースヒット)の僕が聞いているわけですよ。




そしたら当然、僕に話が向くわけで。





女性:あ、すいません、ご挨拶遅れまして、



男性:そうですよね。失礼しました。




そして二人とも名刺を差し出す、




キクチ:あ、、、、すいません。ありがとうございます。


名刺を見ると、どっちも起業をし、社長になった人だった。
なんならこの後、プレゼンする凄い二人だった。





あ、やべーグループのとこに来ちまった。

そう思っても逃げ場はなく、

メンバーがひたすら僕をいじめてくる。







女性:名刺頂戴してもよろしいでしょうか?



でた。でたよ。これ。


なぁ、、なにこれ。

どこもかしこも名刺名刺!って!!!


この日本は名刺ないとダメなん!?


名刺ないと自己紹介させてくれない文化なのか?


とりあえず名刺文化撤廃をここに要求する。




キクチ:あ、申し訳ないのですが、ちょっと今持っていないくて・・・・




女性:そうですか。いえいえ全然構いませんよ。
   どの企業様でしょうか。




キクチ:あ、いや、その、企業とかではなくてですね。。。




女性:では何か団体、NPO等でご活躍を?私も、ある団体の代表なんですよ。



キクチ:あ、いや、そういうことでもなくて、、、




女性:え?じゃあお仕事はなにを?



キクチ:え、っとその。。。ありません。。。。




男性:え、、、、では、、、いま何を・・・・?



キクチ:あ、えーっとそうですね。。。ふらふらしてます



男性:え、、、え、じゃ、じゃあ、就活は…?



キクチ:・・・・してません。ほぼニートです。





沈黙





帰りたい



これが僕の唯一の感情だった。




女性:え、じゃあ、今日はどのような経緯でこちらへ・・・?



キクチ:え、っとタイラくんです



男性・女性:!!!!?????



そうだよね。そうなるよね。

タイラって誰?ってなるよね。



なんなら今日来てないし。





もう一度言う。



帰りたい。




そんな感じで軽い地獄を味わいながら、


イベントは次の部、

プレゼンの部にうつった。




パンフにも書いてあるように、



今日のメインは、起業家、社長たちが


それぞれ10分間、それぞれの理念、
(ここの会場ではそれを「志」と呼んでいる)



を熱く発表するのである。





もうね。どうでもいいわけさ。


だって、僕ニートだもん。




志の前に、仕事くれ。




てか、なんでこんな場所にいなきゃいけないのだろうか。


なぁ、なぜ今僕はここにいるんだろう、、、、


そういった根本的な疑問が、

僕を荒ませ、そしてそれは怒りに似た感情へと変換されていった。





一人目のプレゼンターは、


あの、長野にあるラーメン・餃子チェーン店である、




「テンホウ」



というお店の社長だった。


はっきり言って、この「テンホウ」
長野ではめちゃくちゃ有名。



そういう人がくるのかぁ。。。


と素直に感心するよりも、


ささくれ立った僕は


『長野 観光』とググっていた。



アツい思いを社長がひたすら語る。


先代の想いを引き継いで!!!


ここから長野を!社会を!


新たな価値を創造し!!


これが私の志であります!!!




・・・・



拍手喝采。




・・・なんだこれ。


なぁ。なんだこれ。





これ以上僕を痛めつけるのはやめてくれ。





各プレゼンが終わった後、2〜3分の
各テーブルごとの意見交流会タイムが取られる。




これがまたしんどい。




男性・女性:いやぁーーー!身にしみましたねぇ!アツい志でしたねぇ!!
      さすがOO社長ですね!背筋が伸びましたーー!!




ウルセェ。


ぜったいテンホウでラーメン食べたことないだろ。



僕はあるぞ。

全然美味しくなかったから一回しか行ったことないけどな。



ささくれだった僕は、ひたすら心の中で毒づく。




男性:えーっと、、、どう・・でした?


やめろ。

そんな腫れ物に触れる感じで僕に話しかけるのはやめてくれ。



僕だってちゃんと生きてるんだ。




キクチ:いやぁー!アツい話でしたねぇ。。。びっくりしましたよー!
    
    というのも僕が学生の頃、テンホウ食べたことあって、

    その社長さんのお話聞けるなんてなんかこう、、、不思議な気分です!



ほらみろ。僕だって、人並みのコメントと常識は持ち合わせているのだ。




僕の当たり障りのないコメントに安心したのか、
ホッとしたような表情を見せるメンバー。





男性:え、食べたことあるんですねぇー!それはまたご縁ですね!!


でた。ご縁。

この会場で使われている言葉、
第一位は「志」だが、

おそらく第二位は「縁」


だろう。

なにかと、

人とのご縁で!
この縁を大事に!!

と言う言葉が飛び交う。


でもまぁ、話が広がったみたいでよかった。
場も少しだけ、温まってきた。よかったよかった。

と、安心したのもつかの間、



ここでついにやらかす。



キクチ:いやぁ、でも懐かしいですねぇ。テンホウ。


全然美味しくなくて一回行ったきりですけどねぇー(笑)





男性・女性:・・・・沈黙。。。。





やっちまった。



ポロリと本音が出た。




おい。
ジョージワシントン。

聞いてるか。



正直が全て良い、と言うわけじゃないみたいだ。



時には表面上の言葉や、
嘘というのが必要らしい。



ほらみろ。

メンバーの顔


引きつってるじゃないか。


あ、こいつ、言っちゃった。




みたいな顔してるぞ。




そこで僕はもう、
喋るのをやめた。


おそらくこの感じで行くと
行くつく先は、


誰も幸せにならない物語


だ。



それ以降のプレゼンはもう耳には入らなかった。



気づいたら僕は


『長野 おやき 美味しい』

で情報を集めるので必死だった。






そして、
プレゼンの部が終わり、


今度はディスカッションの時間となった。


僕の予定では、



プレゼンの部からディスカッションの部に変わる休憩時間で帰る予定だった。



司会者:いやぁ、それぞれの熱い想い、しかと受け取りました!
    今の成功があるのも、内に秘めたるその!アツい!志!あってのものなんだと、
    私自身痛感しました!
    でもやはり、今日はその志、価値を共有するための場でもあります。
    私たちは同じ志を持つもの、そう!同志なのです!
    ともにそれぞれの志を一つにして、
この世界を変えていきましょう!






・・・・誰がうまいこと言えと。









司会者:ということですね、それぞれの机には紙とペンがありますので、
今からそちらにですね、今から自分が提供できる志、価値を書いてもらってですね・・・





休憩がない・・・だと・・・??



各テーブルが一斉にペンと紙に手を伸ばす。。。



これは、、、これはマズイ!!!!




司会者:さてみなさんご準備はいいですか!?
    これから皆様には、自分が創造できる、もしくは提供できる価値を書いてもらってですね!
    それからそれを共有していただき、この長野の、いや、日本の社会を・・・!




スっ


キクチ挙手



司会者:ハイなんでしょう!!??ご質問ですか?





キクチ:すいません。帰ります






会場:・・・・・・え?





沈黙










こうして僕は地獄から無事に生還することができた。



こんな話を、タイラくんに会って話したら

なんか知らないけど、


晩ご飯おごってくれた。





あ、

ありがとう。





・・・・


てか、お前も来い



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