人並みに本を読んできて、
それなりに文章を書いてきて、
程々に言葉に情熱を持っている人は
いつだってある欲求を抱えていると僕は思う。
良い文章に出会いたい。
良い文章を書きたい。
このモチベーションで今日もいそいそと
言葉との出会いを楽しむのです。
そしてつい先日、僕は良い文章に出会ったのです。
そこでたどり着いた、良い文章を書くために必要なことを少しご紹介。
良い文章とは
結局のところ、これには明確な定義なんてないし、
そんな定義なんていらないのだと思う。
しかし、少なからず良い文章とされているのには、ある共通点がある。
僕が思うに、
よい文章というのは誰でも思いつきそうなことを
誰もが思いもよらない方法で表現している。
こう言う文章が人の心に残り、衝撃を与え、心を掴む。
これこそが良い文章なのではないかと思う。
と言うことでこの間見つけた良い文章をご紹介。
坂道 (長田 弘)
坂というのは奇妙な道だ。
急な坂を見てうんざりすることもあれば、ちょっとした坂がひどく苦になることもある。
こころをよそに預けていればなんでもなく登り切ってしまう。
振り返って急だったことにびっくりする。なんでもないゆるい坂に見えて、
いざその坂にかかるときつい坂だ。そんな場合もある。
坂はただ坂であるというより、坂という心理なのだ。
坂をとおるとき、人はなにがしかその時の自分の心理の傾斜を通ってしまう。
坂ほど心理的な道はない。
良い文章を書くには
この文章に出会ったのは、
石岡瑛子の作品を見に、
銀座のギャラリーを巡っている時だった。
ある新聞の一面に彼女がイラストを描き、長田さんが、文章を添えていた。
この文章を読んだ時、ハッとした。
なんでかわからないけれど、ハッとした。
なぜこんなに、ははぁーーってなるのだろうか。
え、あのさ、良い文章に出会うとははぁーーー!ってなる感覚わかる?
ワクワクしてきて、つい笑顔になっちゃうあの感じ。
まぁ、それはいいとして、
その謎は意外なことからわかった。
周りにある作品を眺めていると、
このイラストって誰にでも描けそうなのに、なんでこんなに有名なんだろう。
そう思う作品が多かった。
そんな時、一緒に巡っていた美大卒の人に話すと、
誰も描けそうだけど描けない絵を描くのがプロなんだよ。って言われた。
あぁそうか。
そういうことだったのか。
僕は長田さんの文章に感動したのは、
ものすごく当たり前のことを言っているからなんだ
最初に書いたように、
よい文章というのは誰でも思いつきそうなことを
誰もが思いもよらない方法で表現している。
坂道って確かに、気分によって楽だったり、辛かったり。
考え事してたら勝手に登り切っていたり。
坂は心理なんだ。
そう言われてものすごくしっくりくる。
つまり、
誰もが言われてみればその通りと思うこと、
けれど誰もが言われるまで気づかない、言おうとも思わない
モワモワとした部分をぎゅっとかき集めて一滴の水にしてるのだ。
坂って気分によって変わるよね。
そんな当たり前のことを、
日常に埋没している特別を
スッと可視化してくれる。
それこそが良い文章なのだ。と僕は思う。
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