MDと僕と青春時代。

スポンサーリンク
あるいは全力のことばたち。

僕がMDプレイヤーを手に入れたのが
おそらく中学校2年生の時だったと思う。

当時、兄貴が使っていたお下がりで
型は古く、所々銀色の塗装がはげていた。

それでもMDプレイヤーにディスクを差し込むときの音、

カシャっ 

っと乾いた金属音が何よりも好きだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕は4人兄弟で三番目だ。
兄貴と姉貴と弟がいる。

兄がMDをたくさん持っていたので、
僕はそれを借りて聞いていた。音楽に趣味はそんなに合わなかったけれど、

それでもMDを聴いているということがカッコ良くて
UVERworldとかそんなアーティストよく聴いていた。


ある日、発見があった。
自宅から駅までの自転車に乗る時間が、

ちょうどケツメイシの「トモダチ」という曲2回分だったのだ。

一曲目のサビはちょうどここの交差点
二曲目のイントロはコンビニを通る頃
そして曲の終わりはちょうど駐輪場に着く頃だった。

この発見をした日から僕は毎朝ケツメイシを聴いて自転車に乗り、
毎日同じペースで自転車を漕ぎ続けた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

中学2年生といえば今からだいたい13年前。

まだスマホなんて出始めたばっかで、
流行に敏感な奴がiPhone3Gとか使っている時代。

ちょうどMDやCDプレイヤーからiPodに移行始めていた頃。

それでも僕はMDを聴き続けた。
親に誕生日とクリスマスと一生のお願いをすべてまとめて頼んで
当時2万くらいしたMDコンポまで買ってもらった。

 

それもこれも、好きな女の子がいたからだ。

 

中学生なんてCDを買うお金なんてないもんだから
人からCDを借りたり、MDを借りてコピーするのが当たり前だった。

でも、MDコンポを持っている人は少なく、持っていても家族で一個、
兄弟と共有というのが当たり前だった。


だから僕みたいに自分専用のコンポを持っている人をは少なかった。

 

ねぇねぇ、何聴いてるの?

Aikoだよ。

へーー!
(姉貴がよく聴いてる歌手だ)
いい感じ?ちょっと貸してよ。コピーさせて

いいよー!
じゃあ今度人から借りたの他のコピーしてね!

こんな感じで自分でコピーができると女の子に話かけるきっかけにもなったし、
またそこから頼まれたりするようになったりと
思春期の僕にはまさに最高のアイテムだったのだ。

 

とはいうものの、aikoの良さなんてわからなかったし、
それよりも「湘南の風」だとか、「Do As Infinity」とかを聴いてる方が
よっぽどよかった。

だから借りてコピーだけしたaikoのMDはいつもホコリをかぶっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕がMDを好きだった理由はもう一つある。

それは毎週日曜日に起きるスタメン争いだ。

MDといえば今じゃ信じられないけれど
CDアルバム一枚分で容量がいっぱいとなる

もちろん20曲くらいは入るんだけれど、アルバム二枚には足りないし、
一枚のアルバムと他の曲の数曲という中途半端な感じになってしまう。

それに今みたいに、パソコン上でデータをチェックできないから
入ってる曲は全て手書きで、
それも大して大きくもないMD本体のスペースに書かなくてはならなかった。

だからもう、一枚のアルバムをMDに入れて
アルバム名を書くだけでおしまい。というのが一般的だった。

そんなMDを持ち歩くために「ケース」がある。
僕が持っていたのは、半透明のプラスチックで、容量は8枚ほど。
ちょうどタバコ一箱を少し大きくしたものだった。

この1箱と、MDプレイヤー本体に入れておく1枚の計9枚を

毎週日曜日の夜に考えるのだった。

来週はどの9枚でいくか。。。
僕はいろんな人からMDをコピーしていたので、
30枚くらいのMDが家にあった。その中から9枚を選ぶのが
楽しい悩みだったのだ。

今週はゆったりめでいくか、、
やっぱりケツノポリス3はほしい、、、
このアルバムは外せないし、、、、

今じゃ1000曲以上を簡単に持ち運べるし、
なんならいつでもどこでもダウンロードしたり、
YouTubeで聴けるけれど、

当時は100曲を持ち運ぶことが限界だったし、
携帯から流れる音楽は、歌詞なんかない着メロレベルだった。

中学生なんてまだまだ自分で決められることなんてほとんどなくて、
親とか学校、友達にどんどんと心を引っ張られる時期、
そんな中、「自分で持っていくMDを自由に決められる」ことが誇らしかった。

持ち運ぶMDリストによって、そいつのセンスが決まると言っても
過言じゃなかった時代。
毎回この今週のスタメンを決めるのに頭を抱えていたものだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ある日、うわさのiPhone3Gを持っているやつとお喋りしている時、
(そいつと僕は同じクラス、同じサッカー部で仲が良かった)

そいつが

MDとかダセーよ。

って言い放った。


そいつはいつだって流行に敏感で、

パソコンはアップルだろ。
家じゃアイチューンズで家族と共有してるけど?

みたいなことをボソッと言う寡黙なイケメン君だった。


その癖になぜか学校じゃCDプレイヤーを片手に
ずっとCDを聴いていた。
しかもクイーンだのカーペンターズだのビートルズだの洋楽ばっかり。

そいつの口癖は「邦楽とかダセーよ。」だった。
そしてちゃっかりサッカーも上手かった。

 

そんなやつにMDなんてダセーよって言われた。

100曲に頭を抱えるなんてレベルじゃなく、
一枚のCDだけを選んで持ってきているやつに

ダセーよって言われた。


負けた。と思った。
ダサいかもって思った。

 

その瞬間、僕の大好きだった
カシャっ!って音が、少しだけ子どもっぽく聞こえるようになって、


その代わりに
キュイーーンって回り続けるCDの音がどこかレコードを連想させて
大人っぽく響いた。

 

こうして僕はMDを聴かなくなった。
そして親にCDプレイヤーをねだった。

 

 

 

当たり前だけど買ってくれなかった。

 

コメント