家を借りよう。
そう思ってからの僕の行動は早かった。
ネットを駆使して物件を探す。
お。ここ良いじゃん。
問い合わせてみよーっと。
お電話ありがとうございます。
お問い合わせいただいた内容ですが・・(ぺらぺら)
・・内覧可能ですが、ご都合はいかがでしょうか?
じゃあ明日行きます。
明日!?あ、はい。大丈夫です。お待ちしております。
とこんな感じで急ピッチで内覧をすることになった。
思えば今までの人生で引っ越したのは
大学生の時2回
大学院生の頃1回
パナマで2回
とはいえ、大学生の頃は親の助けありきで、
大学院生の頃は学生寮で、
パナマはJICAの力を借りていたので、
自分する引越しは初めてだった。
そんなこんなで、不動産屋さんに行き
挨拶もそこそこに初期費用などの数字だけ確認し、
内覧にいく。
ふむ。文句なし。ここにしよっと。
ということでその場で申し込み。
個人情報を書く。
勤め先:無し。
こう書いた途端、店員さんの顔が曇る。
お勤めされているわけではないのですか?
ないです。
えーっと、無職ということでしょうか?
もしくは転職活動中ですか?
そうですねぇ。自分でコーヒー売ったりはしてます。
就職しようとしてますけど、まだどうなるかわからないです。
えーっと、内定をいただいたとかではないですか?
ないです。
なんとなくだけど、店員の態度が変わる。
えーっと、、、そうすると菊地さんは
無職
ということになります。
まぁ、そう、、ですね。
無職に近いですね。
となると、無職で審査をすることになります。
あっはい。え、ダメなんですか?
いや、一応審査はいたします。
でも内定出ていないと言うことなので、
やはり無職での扱いになります。
あ、はい。。。
アルバイトとかもしてないですよね?
自営業といっても確定申告出しました?
収入は?あ、そのレベルですか。やっぱりそれは無職ですね。
。。あ、はい。。。。。
面接を受けてるとのことですが、内定が確約されるまでは
やはり無職という扱いで審査ですね。
一応審査は通しますが、やはり無職ですので。。
。。。。
もーーやめてくれ!!
何回無職いうねん!
わかった!分かったからもう良いじゃないかそれで!
働いてませんけどなにか!?
こっそり世界の隅っこでコーヒー焙煎してるだけですけど何か!?
ちょっと前まで海外ふらついておりましたが何か!?
クラウドファンディングやって国境なき医師団になけなしのお金全部寄付しましたけど!
国立の大学、大学院でて、国際協力して、スペイン語話せますけど!
教員専修免許5つ持ってますけど!
ちょっとでも誰かのためにって不登校のメディア立ち上げたりしてますけど!
それでも無職ですけどなにか!?
肩書きなんてありませんけど!
住民税払ったことありませんけど!
だからもう、許してくれ。やめてくれ。
。。。もう僕のヒットポイントは0なんだ。
そんなに働いていないことを責めないでくれ。
良いじゃないか。働いてなくたって。。
毎月決まった日に決まった金額もらってなくたって良いじゃないか。
この年で扶養に入ってたってべつにいいじゃないか。
それでも生きてるんだ。
花を愛で、コーヒーを飲んで、本を読んで、誰かを愛し、愛されて
日々の光を肌に浴びて、眠くなったら眠り、
そしてまた新しい1日を笑顔で迎えているんだ。
そうやって生きているんだ。それで良いじゃないか。
無職だって良いじゃないか。その目をやめてくれ。
働いているのって偉いし、すごいし、
税金を納めて本当に素晴らしいと思う。
だけど、だからといって無職をそこまでディスらないでくれ。
僕だって、僕だってなぁ。・・
。。。。
。。。なんだろう。僕ってなんなんだろう。
肩書きなくて、毎日決まったルーティーンもなくて、
同僚という仲間も上司も部下もいなくて、
安定した収入がない僕ってなんなのだろうか。
何かを求めてきて、何かを手に入れて、
何かに向かって努力して、何かを得てきたつもりの
この僕の人生に一体何が残ってるのだろうか。
なぁ、みんなはどうなの。
この深海のように広く深い世界に漂う自分を
どのように溶かされずに、流されないようにしているの?
それって仕事なの?就職しているから自分を保っているの?
それとも僕にはないなにかで保っているの?
僕はもう溶けてしまいそうだ。
溶けて流れてこの塩辛い世界に混ざってしまいそうだ。
でもそれで良いのかもしれない。
この色を持たないこの水と混ざり合っても良いのかもしれない。
僕が溶けたところで
僕を包む水の色に着色することなんてできやしないから。
だって僕、元々無色(職)だから。
完
まぁ、多少盛ったけど、マジでこれ今日あったわけさ。
不動産屋さんで
帰り道、少しだけ下を向いて歩いたよ。
そんでその時、このオチだけ思いついた。
そんでニヤニヤしながら文章構成考えながら帰ったのだ。
そのくらいはまだ元気。
だけど、本当はね、
本当は少しだけ涙が出そうだったよ。
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