コーヒーのお便り。〜VOL.1〜
コスタリカと僕
コスタリカに初めて行ったのは2017年の秋のことだった。
当時お隣の国であるパナマに住んでいたため、お気楽な旅行気分で首都サンホセへと向かった。
首都であるサンホセは、標高1000mを超えているため
パナマとはうって変わって涼しかった。
この温度差がなんとも言えない“外国感”を演出してくれて、僕はワクワクしながら長袖に袖を通したのだった。
サンホセの空港を出て、路線バスに乗る。形は日本のバスと同じではあるものの、とても古びたバスだった。座席は田舎の駅のホームにあるようなプラスチック製で、とても硬かった。バスには運転席側から乗り、料金は先払いだ。
コスタリカの通貨は「コロン」というが、その音の響きとは裏腹に一枚一枚の硬貨がデカくて重い。500円玉を遥かに凌駕するサイズの小銭で僕の財布はかつてないほどの重量感を得た。
市内のバス停からサンホセの中心へと続くメインストリートを登っていくと、両脇にはお土産屋さんやレストランなどのお店が並ぶ。路上では行商人が野菜や携帯の充電ケーブル、違法なDVDなどを売っている。行商人たちは視界に警察官が映るとサッと全ての荷物をしまい、何事もなかったかのように歩き出すのだ。
そして警察官が去っていくのを確認したら、何食わぬ顔で路上に腰を下ろし、商品を再び広げる。僕はその早技を毎回興味深く眺めたいた。
たまに警察に気づかずに見つかってしまう人がいた。その人はしっかり怒られていた。
コスタリカで僕は毎日決まったお店でピザをテイクアウトして、街をぶらつくのが日課だった。
ある日、公園でピザを食べていると、広場で全身ピンク色のタイツに身を包んだおじさんがフラフープを回していた。しばらく経つとおじさんは、おしゃべりをしている若い女性たちに声をかけに行った。日本だったら警察を呼ばれてもおかしくない状況だが、なぜか若い女性たちは笑いながら一緒にフラフープを始めたのだった。僕はただその光景をピザを食べながら眺めていた。食べていたのはいつもと同じメニューのサラミと玉ねぎのピザだった。
(なぜか路上芸人のアシスタントみたいなことをする羽目になった)
中米のスイスと呼ばれるこの国は、経済や教育の水準が周辺諸国に比べると非常に高いと言われている。確かに街は整然としているし、ゴミ箱は至る所にあり、信号が設置されている。 警察官もパトカーではなく、スポーツバイクに跨って颯爽とパトロールしている。
だからこそ、ところどころに見える「中米っぽさ」がより際立つのだった。 路上での行商人、ぶら下がる豚肉、路地裏のツンと来る匂い、どこからか聞こえるラテンのミュージック。そして底抜けに明るい笑顔と笑い声が響く街。
そんな絶妙なバランスの光景に僕は心を惹かれ、毎年コスタリカに訪れるようになったのだ。
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