第1回
山をなめるな 編
第2回
バイブス上げてけ編
第3回
デート前はちゃんと寝ろ 編
山好きの皆様、どうか僕らを叱らないで下さい。
このシリーズは山を軽視しているわけではなく、
ふざけたノリで山に行くと地獄を見るぞ。という反面教師的な側面を担っています。
これを読んでふざけた人がいなくなることを心より願っております。
という趣旨で一つよろしくお願いします。
もう一度言います。
山好きの皆様、どうか僕らを叱らないで下さい。
教訓 13 大体のものは笑顔でごまかせるけれど、距離はごまかせない
深夜四時。
装備も準備も不十分な僕らは
意味もわからないノリで山を登っていた。
気づいたらこのふざけた写真を撮った時から
12時間くらい経ってた。
いや、すごいね。タイムリープだね。
時をかけたいよね。
そしたら今すぐあの時の僕らにいうもん。
やめとけ
って
歩き始めて5時間
心が折れて折れて砕けて
サラっサラになってしまった心の破片をかき集めて
気合とノリとバイブスで固め直して再利用する
究極のエコ生物と化した僕らは
なぜかすげー笑顔だった。
ここまで来たら下山するより登って死にたい。
片道燃料の零戦。
降りられません。登るまでは。
もうなんかよくわからないけど、
ハイになってた。
ランナーズハイだった。
まぁ、止まったら風で一気に体温奪われるから
歩き続けるしかなかったんだけど、
気づいたら
看板がゴールまでの距離を
2・5キロ
と表示してた。
それを見た瞬間、思った。
ぼくとKくんは心から思った。
ついにここまできたか・・・
ではなく
まだそんなにあるのか。。。
食料も尽き、
体温は下がり始めた僕らは
もう笑顔で乗り切るしかなかった。
人間ってすごいな。って思ったことがある。
それはね。どんな状況でもお腹がすくということ。
今まで食べたものがもうスッからかんになっていく感覚が手に取るようにわかる。
多分、今胃の中にあるものがなくなったら、
一気に動けなくなる。
お互いにそれを薄々と感じながら
気づかないふりをしていた。
ラストスパートをかけるときがきた。
多分、次止まって冷静になったらやばい。
動画を撮ってる時だけは元気だけど、
道中はもう一ミリもカロリーを消費したくないため、
会話はほぼゼロ
足をつりながらも歩き、
道端で拾った木を支えに歩き、
寒さに震え歩いた。
この動画の直後、
一台の車が
ぶーん
と軽快な音で僕らを横を過ぎ去っていった。
。。。。
ツアーの車だった。
おいーー!!!
車で頂上いけるのかよぉーー!!!!
言ってくれ!
そういうのはもっと早く言ってくれ!!
歩く達成感?
いらねぇわ!
暖かい空気を肺に入れさせてくれ。
冷たい石じゃなくて、椅子に座らせてくれ!
てかもう帰らせてくれ!!
あの日ほど文明を憎んだことはない。
だが憎しみは時として愛情へ変わる。
頼む。乗っけてくれ。。
そんな僕らの願いは虚しくエンジン音にかき消され、
あたりはまた漆黒へと包まれた。
・・・・
歩くか。
ちらりとKくんをみる。
ちょっと涙目だった。
教訓 14 あの、なんだかんだラーメンは味噌と豚骨が一番うまいよね。
僕らの歩みを支えていたのは、
「早く下山してラーメンが食べたい」
とにかくカロリーをくれ。温度をくれ。
その一心で登った。
途中またあのドイツ人たちに会った。
彼らは道角でカセットコンロを用いて
ちょっとした料理を作ってた。
いい匂いだった。
そうだよね。普通。そうだよね。
バナナ二本じゃ登らないよね。富士山。
何か食い物をくれ。
僕らは空腹の獣のようにただ食べ物を目指して頂上へ急ぐ。
なんか知らないけど、
頂上にはラーメン屋さんがある
そう思っていた。
というかそう思わないともう足が動かなかった。
もうちょい頑張ればラーメンが食べられる。
頼む。
味噌ラーメンであってくれ。
そんなことを考えていたら。ついに。
着いた。
頂上に着いたのだった。
ボルカン バル
パナマで一番高い山
標高3745m
登頂したのだった。
あれ?今日山登っちゃう?
そんなふざけたノリで登山を決めてから13時間
登り始めて6時間
僕らは頂上に着いたのだった。
ラーメン屋さんは当然ながら無かった。
教訓 15 何が辛いかってさむいよね。
山の上はそれはそれはこの世のものとは思えないくらい寒く、
もうなんていうか手の感触がない。
それもそのはず。
普通のジーパンだもん。汗吸っちゃって吸っちゃって乾かないから
もう、寒いよね
夜明けを待つ僕らは完全に遭難者だった
時刻は明朝6時過ぎ。
少しずつ、この世界に朝が訪れる。
この朝日を待つというじれったい時間。
シンプルに思うのは、
寒い。
そしてついにKくんは雲の上の存在となってしまった。
そして地獄のように長いときが過ぎ、
ついに
日が昇った。
この世界へ新たなる1日の始まりを告げ、
そして僕らには長い1日の終わりを告げた
そして突然に始まった物語は
当たり前のように幕を引く。
教訓 16 パナマ人は時として想像を凌駕することがある。
下山が始まった。
マリオカートとビリヤードのせいで仮眠さえ取ってない僕らは
登頂した達成感と前借りした体力のツケがきて、
帰りの道中、
倒れた。
お互い一歩も動けなくなった。
少し寝よう。
30分だけでいいから寝よう。
道端に倒れ込み、目を閉じた。
時折通り過ぎる旅人に心配されながら
陽の暖かさを感じながら寝た。
石の上にタオルを引いて寝る。
劣悪な環境にも関わらず、
人生で一番気持ちよく寝れた瞬間だった。
下山途中、
僕らを救ってくれた半袖のパナマ人に会った。
パナマ人「どうだった?」
ぼく「死ぬかと思ったよ。もう二度と登りたくない」
パ「あははは。僕は今から家帰って少し寝たらまた夜登るよ。」
ぼく・Kくん「は?」
彼はガイドだった。ほぼ毎日この山に登っているらしい。
Tシャツで。
僕らは笑った。
この世界で最も清々しい笑い声が明け方の山にこだました。
下山して、
宿のチェックアウトになんとか間に合い、
僕らはすぐにバスに飛び乗った。
そして食べた。
3玉食べた。
教訓 17 「やらない後悔よりやる後悔」もあるけれど、 やらなくていいこともやっぱりある。
僕らは結局この登山で、
35キロくらい歩いていた。
こんな数字見たことない。
いろんなことを感じ、学んだ1日だった。
一言で言うと、
山をなめたらマジでやばい。
死んでもおかしく無かったと本当に思ってる。
なぜなら僕らが登った時、
パナマは雨季だったから。
偶然にも雨が降らなかったが、前日は豪雨だった。
もし途中で雨が降ってたら・・・・
多分、死んでた。
雨具なんて持ってるわけないもの。
ジーパンだもん。
ちなみにKくんはなぜか折りたたみ傘をバックに忍ばせてた。
そういうところはちゃっかりしていた。
なんにせよ、
僕の人生の中で忘れられない1日になったことは間違いない。
山の面白さ、恐ろしさ、準備の大切さ、ラーメンのうまさ。
そして朝日の美しさ。
言葉では語りきれない感情が僕を取り巻く。
楽しかった。
そんな一言では済まないことがたくさんあった。
でも僕はありがたいことに今日まで生きてこれてる。
また明日もこんな感じで生きていければいいかな。
そんな風に思いながら今日も山を眺めながらコーヒーを飲む。
ということで
ひまじんがふざけて本気の山に登ったらどうなるか。
山をなめたらあかん。下手したら死ぬ。
でした。
ありがとう。
2019/11/03
パナマ ボケテ ボルカンバル 頂上にて。
コメント