ひまじんがふざけて本気の山に登るとどうなるか。2 (パナマ ボルカンバル 登山)

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ひまじんの挑戦シリーズ

山好きの皆様、どうか僕らを叱らないで下さい。

このシリーズは山を軽視しているわけではなく、

ふざけたノリで山に行くと地獄を見るぞ。という反面教師的な側面を担っています。

これを読んでふざけた人がいなくなることを心より願っております。

という趣旨で一つよろしくお願いします。

もう一度言います。

山好きの皆様、どうか僕らを叱らないで下さい。


 

 

前回

ひまじんがふざけて本気の山に登るとどうなるか。(パナマ ボルカンバル 登山)
山好きの皆様、どうか僕らを叱らないで下さい。このシリーズは山を軽視しているわけではなく、ふざけたノリで山に行くと地獄を見るぞ。という反面教師的な側面を担っています。これを読んでふざけた人がいなくなることを心より願っております...

 

 

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教訓 5 スティーブ・ジョブスは時に残酷

 

僕らが登っている山が実は富士山級ということに気づいてからというもの、

二人の足取りはどこか軽かった。

 

それは決してチャレンジ精神に燃えているからではなく、

 

「富士山級の山を登るにはあまりにも装備が不十分だ」

ということにうすうす気づき始めた僕らは、

 

「現実」が「現実」として僕らに襲いかかる前に逃げ切ってしまえ。

 

というスタンスだった。

 

 

だからこそ

体力があるうちにノリと勢いでカバーするしか僕らに生きる術はなかった。

 

 

しかし、

深夜の山は当たり前のように真っ暗で

全てを吸い込んだ。

体力や勢い、そして希望までも吸い込んだ。

 

そして引き換えに僕らに与えられたのは無情にも

後悔を乗せた冷たい風だけだった。

 

 

そんな真っ暗の中、

K君がふと呟いた。

 

「きくちさん、アイフォンのバッテリーってたまにバグるじゃないですか。」

 

「というと?」

 

「ほら、さっきまで充電100%だったのに

 一瞬で80%になったりするじゃないですか」

 

「あーはいはい。よくあるよね。」

 

「僕の携帯、それなんですよ。笑」

 

 

・・・は?

 

ここで、再び状況を説明しよう。

 

前回の記事で書いたように

K君は到着直前にボルカンの標高ついて調べ、

富士山と同じということを知った直後、

 

彼の生存本能がボルカンのマップをダウンロードさせていたのだ。

 

そしてその携帯のバッテリーがバグってる。ということだ。

 

 

きくち「え、、、あと何パー?」

 

 

K君「8%です」

 

きくち「はっや!!!!

    なんで!?なんでもう瀕死なの!?」

 

K君「さっきあいみょん聞いたからです。」

 

 

きくち「あいみょーん!!」

 

「君はロックなんか聞かない」なんて聞いてる場合じゃなかった。

てか、皮肉すぎる。

 

いや、つかK君!そういうこと先に言って!!

 

 

とまぁ、こうやって僕らは深夜の富士山級の山で

Mapを失ったのだった。

 

教訓 6 後悔はしてからでは遅いが、したところでどうにもならない。

 

こんな状況で僕らに残されたのは

とにかく歩きまくるしかなかった。

 

さっさと頂上に着きたかった。

 

しかし、

僕らは大体どのくらいで頂上に着くのかなんて知る由もなかった。

 

なんか知らないけれど、

僕らの中では、頂上まで6キロ

というイメージがインプットされていた。

 

何にも根拠がない数字。

理想にしては都合が良すぎる数字。

 

 

でもそう信じていた僕らには、

 

時速3キロで登れば2時間で着く。

 

そういう淡い希望が最後の望みだった。

 

今冷静に考えればわかることだけど、

富士山を時速3キロで登っても2時間で着くわけがない。

 

 

ちらっと見えた看板の「頂上まであと12キロ」という看板も

何かの間違えだ。後12キロもあるはずない。

だってそんなにあったら僕らはまちがいなく死ぬもん。

 

 

でも本当にこう思ってた。

そうでもしないともう、心が折れてしまうからだ。

 

 

そして、ほぼすべてのエネルギーを使い果たし、

2時間休みなしで登った。

 

 

僕らの作られた理想ではそろそろ頂上へ着く。

 

 

はずだった。

 

 

深夜1時40分過ぎ。

 

早くも全てを使い切った僕らは

藁にもすがる思いで

 

Mapを開いて見てみた。

 

お願いだ。頂上まであと少し、そう言ってくれ。。。

 

 

 

・・・

 

おい。

 

まだ、半分も来てないぞ。

 

 

はっきりと心が折れる音がした

 

 

そして気づいた。

 

この山、ガチだった。。。

 

僕らが思ってたより、普通にガチだった。

 

そしてなぜか知らないけれど、

動画を撮り始めた。

 

なにか気を紛らわす必要があった。

 

その動画がこれ。

 

 

 

パナマ ボルカン登山 1

 

まだ、なんとか笑えてる。

しかし同時に、半端ない後悔と

あれ、無理じゃね。。?

とうっすら感じ始めている様子が見て取れる。

 

というか気づいた。

 

あれ、これマジもんの山じゃん。。。

 

それでもまだ僕らは歩くしかなかった。

ここで心を折ったら多分死ぬ。そう痛感したからだ。

 

最後の最後。風前の灯を全力で守りながら僕らは歩みを進めた。

 

10分でその火は消えたけど。

 

ちなみに、K君の携帯のバッテリーもこのタイミングで消えた。

 

 

教訓 7 限界は来た時に気づく。「あ、これ限界だ」って。

 

 

 

僕らの風前の灯は、10分でその火を消した。

 

 

そして気づいた。

 

あ、食料がもうない。

 

残ってる食料は

 

山頂でたべよーぜー!!

とか浮かれながら買ったパスタみたいなやつと

エムアンドエムの小袋一個。

 

なぜ、一人一袋にしなかったのか。。。

あの時の僕らに問いたい。

 

 

動画でも言ってるけど、

クイズミリオネアで、

一万円の問題を前に50・50を使い切った気分だった。

 

観客よりも誰よりも僕らが気づいていた。

 

これ絶対クリアできんやん。

 

 

山頂までは半分残っているにも関わらず、

こっちにはもう手持ちのカードはない。

 

序盤に飛ばしたツケが回って来ている。

体力はもう限界値だし、眠い。

 

何より寒い。

持ってる服は全部着た。

 

休憩する場所もないため、座るためには地面しかない。

そうすると体温が奪われて寒い。

 

かと言って立ってる余裕もない。

 

 

 

後悔がものすごい勢いで僕らを襲う。

 

でもまだどこかで

 

登れんじゃね?

という微かな希望を信じているのが見て取れる。

 

だってこっちが死にそうなとき、欧米人が半ズボンで

颯爽と隣を歩いて行ったんだもん。

 

あれ、行けるのか?

 

そう信じるしか僕らに残された道はなかった。

 

 

ボルカン 登山 2

 

教訓 8 「自分だけは死なない」というのは迷信に過ぎない

 

食料も尽きかけ、体力の限界を感じ、

残っているのは虚構のモチベーションだった。

 

とにかく空元気でも笑え。

とにかく笑え。

 

その言葉を胸に僕らは歩いた。

振り返ったら死ぬ。そういう恐怖が僕らを動かした。

 

そしてこの時間帯、

 

K君がついに変なことを連呼しだした。

 

 

その言葉は

 

 

「バイブス上げていこう」

 

 

だった。

 

意味がわからなかった。

本当にどういう意味か分からなかった。

 

にも関わらず

 

なんか知らんけど元気出た。

 

この道中は二人で

 

 

きくち「バイブス上げてくぞー!!」

 

K君「ういっす!!」

 

 

 

K君「バイブス下げないでいきましょー!!」

 

きくち「よっしゃー!」

 

 

 

きくち「バイブス上がってきたなぁおい!」

 

K君「いや、マジでそうっすね!!」

 

 

このやりとりしかなかった。

 

もうあいみょんなんて記憶から消えていた。

 

僕らを支えているのはあいみょんでもみのもんたでもなく、

バイブスだった。

 

このバイブスに支えられ、僕らは

少しだけ頑張って登った。

 

しかし、意味のわからないバイブス効果はさほど続かず、

あっという間に手のひらを返し、

無意味な言葉として宙を舞うようになった。

 

 

それと時を同じくとして、

弱音が出てくるようになる。

なんならイライラしてくる。

 

 

なんで山なんて登ってんだ。

というか、なんでこんな装備できたんだ。

つか、バイブスってなんやねん。

 

山をナメるな。

 

 

そういう自責の念のようなものが僕らの足取りを重くする。

 

そして、

この登山の中で最も厳しいエリアに差し掛かった時、

 

ついに心が折れた。

 

もう無理だ。下山したい。

 

 

当たり前のことだけど

下山を決意したからと行ってすぐ楽になるわけではなく、

また何時間も歩かなきゃ帰れない。

 

こんな状況の中、

僕らは確かに死を感じた。

 

今までとは比べものにならないくらい、

はっきりとした輪郭を持って僕らの背後を死が付いてくる。

 

 

あぁ、楽になりたい。

パトラッシュ、僕はもう疲れたよ。少し眠いや。

そう本当に思うほど地獄の時間だった

 

そしてその時の映像がこれ。

 

ボルカン 登山 3

 

 

現実逃避でもう笑顔。

 

後悔

怒り

疲れ

弱音

 

マイナス要素がどわっと出てる 

 

出すぎて逆に笑ってる。

 

そしてK君が動画の中でちょっとキレてる。

 

K君「バイブスあげようと思ったら上げれるけど、上げたくねぇわ。」

 

バイブスの生みの親のK君でさえ自分のいる状況にキレ出すほど

過酷だった。

 

笑うしかない。

夢ならば覚めてくれ。

 

そう思って僕らはまた歩を進める。

 

時刻は深夜2時半。

 

登り始めて3時間

 

頂上は依然として遠く、風は冷たく、

目の前には幾重にもの闇が僕らをただ静かに手招いていた。

 

 

つづく。

 

 

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