ひまじんはいかにしてひまじんになったのか。遠いどこかの街角で。大学院生〜JICA編 (最終回)

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ひまじんの挑戦シリーズ








自分って一体何が好きで

何が嫌いなんだろう。

何に喜び

何に悲しむんだろう。



どんな光景を美しいと思い、

醜いと思うのだろう。

 

それを知ることが


僕にとっての生きるということ、

人生の意味だと思っています。

 

本文より引用。

 

 

 

こんにちは。

おきくです。

 

さて、なんだかんだで

第四回に渡ってお送りしています。


ひまじんはいかにしてひまじんになったのか

遠いどこかの街角で 編




ついに第4話

 

大学生院生〜JICAボランティア編

 

です。


 

前回は

大学院をやめると決めて、

退学届を手に、

コース長の教授まで会いに行ったというひまじんさん。

 

しかし、

その教授の言葉で人生が変わったといいます。


一体何があったのでしょうか。


ついに最終話。

 

お楽しみください。

 


 

 

僕はどこかで言葉を待っていた。

 

インタビュアー失格かもしれないが、

どう声をかけていいか、わからなかったからだ。

 



ただ、

ひまじんさんが口を開くのを待っていた。

 




「ただ逃げるだけじゃ意味ないよ」




 

——え?

 

不意に出た言葉に

思わず聞き返してしまった。

 

 

「いや、教授が僕にそう言ったんです」

 

 

——その、退学届をもって相談しに行った教授が、ですか?

 

 

「えぇ、そうです。」

 


ーーえっと、教授はどのような対応だったのでしょうか?

  可能な範囲でいいので、教えていただけますか?




「えぇ。もちろんです。」

 

 

そう言って彼は

新しくコーヒーを注文した。

 

 

——ちなみに、ですが、そのコーヒーはなんですか?

 

 

「ブルマンです」

(ひまじんとブルマンの関係は記事参照)

 

 

・・・

前置きがまた長くなりそうだったから

今回はこれ以上

なにも聞かないことにした。

 

 

 

「さて、教授のリアクションですが、

かなりびっくりしていました。

というのは、僕は基本的には元気な院生を演じていたので

まさかそこまで悩んでいるとは思ってなかったでしょうね。」

 

 

——なんておっしゃってました?

 

「もちろん、『もったいないよ』って一番最初に言われました。


でも、事情をゆっくりと話して、もう限界だということを伝えました」

 

 

——そしたらなんと?

 

 

「わかってくれました。そしてはっきりと、


『休学とかではなく、退学したほうがいい』

と進めてきました。」

 

 

——それは、意外、、。でも、、なぜ?

 

「なんでも、

『一度研究から逃げたら戻って来るのは本当にしんどい』

と、


つまり、
ここで踏ん張るか、完全に縁を切るか、


どっちかにしたほうがいいと、


僕に伝えてくれました。」

 

 

——なるほど、そしてどう答えたんですか?

 



「『やめます』と言いました。

もう続けられる気がしなかったのは事実だったので。

そしたら教授が言ったんです、

 

『ただ逃げるだけじゃダメだ』

 

と」

 

——なるほど。さっきの言葉ですね。
  でもそれはどうしてですか?

 

つまり、

『多少なりとも言い訳を作らないとダメだ』

と。

『心が弱って逃げるのは構わない。


だけれど、ただ逃げるだけでは、自分に自信が持てなくなって、

この先もずっとこの出来事に苦しむことになるよ』

と。

 

『だからこそ、自分を納得させる理由を作ってから逃げなさい』

 

そう伝えてくれました」

 

 

「その言葉に僕は衝撃を受けました。

なにがズシンと心にくるものがあったのです。

その通りだなって

 

そして僕は退学届を出すための
理由を探したんです。



大学院から逃げる理由を、

自分を納得させる理由を」

 

 

——もしかして、、、
  それで見つけたのが・・・?

 

 

「えぇ、お察しの通り、

 
JICAボランティアだったんです」



彼の顔に笑顔が戻っていた。


まるで最後の謎を解き明かした探偵のような

すっきりとした顔だった。

 

と思ったら

頼んだブルマンが美味しかっただけだった。



——なるほど。。。

そういった経緯でボランティアになられたんですね。

ようやくすっきりしました。


・・・あれ、では大学院は結局どうすることにしたんですか?

 

 

「えぇ、改めて退学届を持って、

JICAボランティアを受けると告げた時、

教授は
僕の背中を押してくれました。


しかし、

『一次試験を突破するまでは大学に籍を置いといたほうがいい』


と退学届を受理してくれませんでした。

 

 

——ほう。




「そして一次試験を突破した報告をしに言った時、
 彼は笑顔でこう僕に告げたんです」

 

『じゃあ、ついでに大学院も修了しちゃいなよ』って」



「そして僕も『そうします』と答えました」



——??

 あ、、えっと、すいません。

話が急に分からなくなってしまいました。


だって、ひまじんさんがもう限界だったのを
教授はご存知だったはずですよね?


それに、
ひまじんさん自身もやめたくて仕方なかったのに、


なぜ修了を目指すことができたのですか?

 

 

「いや、これが僕自身も不思議だったんですよ。

今思えば、教授の手のひらで踊らされて、
そして、救われたという感じです。」


そう言って、

新しいココアシガレットの箱に手をかける。



——すいません。もう少し詳しくお願いします

 

 

「要は、僕が弱っていた原因というのは自分への絶望だったのです。


担当の教授からの言葉をそのまま鵜呑みにして、


『自分は何もできないダメな人間だ』


って思い込んでいました。

 

そして実際うまくいかなくなって

やっぱりダメだ、って落ち込む。

要は、

負のサイクルにいたのです。

 

しかし、JICAを受けると決めて

自分に言い訳ができたこと、

そして一次試験を突破したことで、


少しだけ、自分の自信を取り戻すことができたのです。

 

あ、もしかしたら『まだ行けるかもしれない』って。


試験を突破したことによって

『自分はまだ必要とされている、』

『価値のある人間なのかもしれない』


と思えるようになった、

だからこそ、
修士論文にもう一度挑戦してみよう、

そう思えるようになっていたのです。

 

 

今までにないくらい早口で

その心境を語るひまじんさんの目には

 

しっかりとした力があった。

 

ココアシガレットの封を開ける手は止まっていた。

 

 

——・・・なんだか言われてみれば当たり前のことですが、

  それってすごいことなんじゃないですか?

 

「えぇ、おそらく運が良かったと思います。

もう少し、気分が下に落ちていたら、
深刻な状況だったら、、、

おそらくこんな簡単には戻ってこれなかったと思います。

 

そして、
あの時教授が退学届を受理しなかったのは


試験突破のためなのではなく、

 

こうやって
自信を取り戻した時のことを

見込んでのことだったのだろうな、

と今は思います」

 

 

——なんというか、すごいお方ですね。

 

 

「えぇ、なんというか僕とはとても馬の合う教授でした。

院生一年の終わりには

その教授に大学の紀要論文を
一本書かせてもらうくらい仲が良かったです」

 

 

——修士論文の他に論文を書かれているのですか?

 

 

「もちろん、ちゃんとした学会誌ではなく、
紀要論文レベルで授業の延長線上のものですが、

それでも一応サイニー(インターネット上の論文データベース)

に登録されています。

 

 

——なるほど。。。
すいません、話が脱線してしまいました。

では大学院に残ると決めてからの生活は

どのようなものだったのでしょうか?


思い出したかのように
手はココアシガレットの封を切り始める。

 

「実はその時期もあまり記憶がなくて、、、
というのも、夏くらいにJICAボランティアに合格したのですが、
ボランティアは、

出発前に訓練所にて訓練を2ヶ月間受けなくてはなりません。

僕の場合はそれが1月〜3月でした

 

しかしその時期は、
修士論文の口頭試験や最終提出日とかぶっていて、

日程的に、
大学院をやめるか休学する必要性がありました。

しかし、その教授は事情を考慮してくれて、

特別日程、

つまり、修了までの日程を

2、3ヶ月前倒しにしてくれたのです」

 

 

——いや、本当に優しい教授さんでよかったですね。

 

 

「えぇ。本当に感謝しています。

しかし、そうなると
修論を書く時間が実質3ヶ月程度しか取れないことになりました。

 

3ヶ月で修論なんてありえない世界ですよ。

 

ですけど、やるしかないので、

人の助けを借りながら本当に寝ないでやりました」




ココアシガレットをかじる。
2本一気ぐい。
初めて見る光景に少しひいた。


 

「もちろん、完成度を見たら酷いものだし、

体裁だけ整えたようなそんな論文にしかなりませんでした。

担当教授にも、

 

『内容についてはもう触れないであげます』

 

と最大級の皮肉をいただいて提出させていただきました」

 

 

——それはなんとも最後まで後味の悪い、、、

 

 

「もちろん、担当教授を

数多くの知識や、

研究への姿勢を教えてくれた


偉大な教授として僕は尊敬してます。

 

なんだかんだ言って一番迷惑をかけてしまったのに、

 

最後まで見捨てないでくれましたから。感謝しています。

 

でも、とにかく、出せたんです。
修士論文を12月に。確か26日だったかな。

それが本当に嬉しくて嬉しくて。

 

人生の最大級の絶望

それをくぐり抜けた自信、

そのどっちも経験できた

そんな2年間でした」

 

 

——なるほど、、、壮絶な2年間でしたね。

 

「もちろんもっと辛い思いをしている方もたくさんいるし、
僕なんて生ぬるいかもしれませんが、



それでも自分にとってはとても辛い日々を
どうにか切り抜けたような実感があります。

そして同時に二度と戻りたくない日々でもあります。
今でも思い出して、心臓が嫌な鼓動をする時があります」


そう言ってブルマンとココアシガレットを
同時に味わう。

 

 

——それでJICAボランティアになったと。

 

 

「えぇ、なってからの日々は
この前も話させてもらったように、
まぁ、いろいろありました。」

詳しくはこの記事参照

 

—— ありがとうございます。

これでようやくひまじんさんの全てが繋がったような気がしました。



なんだか山あり谷あり、そんな人生ですね。

 

 

「あはは、誰だってそれぞれ
素敵なその人だけの人生を送っていると思っています。

だから僕はいろんな人と話してその人の人生を聞くのがすきなんです。」


そう言って、
ココアシガレットの箱を優しく見つめる。


——人生、、ですか。

考えてみると、「人生」というのは面白いですね。


こうやっていろんな人と共有することができる。

今回、こうやってひまじんさんのお話聞いて、


なんだかこう、グッとくるものがありました。


「そうですね。本当に人の人生というのは面白いと思います。
いろんな人生がある。それを分け合っていく。
なんか、良いですよね」


はにかみながら

コーヒーをすする。

 

——あの、ちょっと聞きたいのですが、
 ひまじんさんにとって


『人生』


ってどんなイメージなんですか?

 

 

 

「うーん、、、難しいですね。

でも。『人生』、つまり、『生きる』っていうのは

やっぱり自分という他者を知るためにあると思ってます。

 

例えば、

 

自分って一体何が好きで

何が嫌いなんだろう。


何に喜び
何に悲しむんだろう。


どんな光景を

美しいと思い、
醜いと思うのだろう。

 

それを知ることが

 

僕にとっての生きるということ、


人生の意味だと思っています」

 

 

——なるほど。。自分を知るためにある。。と。

 

 

「えぇ。だから僕はこの先も自分を知るために

いろんな人や景色に出会っていきたいと考えています」

 

 

 

——なんだかグッと来るものがあります。
・・・それにしても、
長い間本当にありがとうございました。
これにてインタビューは終わりにしたいと思います。
ひまじんさん、本当にありがとうございました。



 

「いえいえ、こちらこそ、改めて自分の人生を振り返ることができて

貴重な経験になりました。ありがとうございました。



それにぼく、


・・・
ひまじんですから」



そう言って、

彼は笑いながら

ココアシガレットの箱に手を伸ばした。







暖かい風が吹く。

春、
新たな生命が芽吹く季節。


この後

何をしよう。

明日は

何をしよう。

毎日の中の1日を
どう過ごすのだろうか。


もしかしたら暇という生き方も

悪くないのかもしれない。


 





ということで、

 

ひまじんはいかにしてひまじんになったのか

遠いどこかの街角で 編

 

全編終了です。

 

だらだらと自分語りに付き合っていただいて

本当にありがとうございました。

 

 

多少なりとも恥ずかしさ等を感じる部分も多々ありましたが、

改めて自分の人生を振り返れた良い機会でした。

 

 

さて、今回をもちまして、こう言った趣味というか

僕がただ書きたいと思ったことを

ただダラダラ書く系の
記事は一旦終了とします。

 

また、どこかでお会いしましょう。

 

次回からは

もうちょっといかにも普通の記事をしばらく書いていこうかと思います。

飽きるまでね



じゃあ、またね。

ありがとう。

 

ボケテの
夜風とコーヒーを味わいながら。


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