香港とチョンキンマンションとカジノ

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あるいは全力のことばたち。

 

ふと昔のことを思い出すことがある。
1から10を思い出す事はできないけれど、それでも、
途切れ途切れのネガフィルムを眺めるように、断続的にあの時の空気や喧騒、会話を思い出す。

そしてその思い出の結末は決まって楽しいものなのだ。

あのバスに乗ったのはどこに向かう時だっただろうか。
あの時食べたケバブは一体どこで見つけたのだろうか。
そんな断片的な記憶を自分の中で再構築していく。

旅を終えた今であっても、もう一度僕は頭の中で旅をする。
好きなドラマの再放送を見るような感覚。
これこそが旅の醍醐味なのではないかと思う。

そして僕が今でも思い出すたびに心の底から笑顔になってしまう旅がある。

香港、マカオを旅した時だ。

この二つといえばあの旅人たちのバイブル「深夜特急」の代名詞だろう。
そしてこの深夜特急といえばもう第1巻のカジノ編を思い出さずにはいられない。

主人公がマカオのカジノで、旅のスタートにもかかわらず旅が終わるかもしれないという崖っぷちに立たされる。その中で、本人の後悔と苦悩、そして希望、オカルトともとれる推理、あるいは確信に全てを賭けていく姿、その描写一つ一つがとてつもなく荒々しくも整然と書かれている。

マカオ編が深夜特急の原点にして頂点、と言っても過言じゃないほど僕は好きだ。

あらすじもググらずとりあえずはぜひともマカオ編は読んでいただきたい。


まぁ、それはさておき、
僕が初めて香港に足を踏み入れたのは確か大学3年生くらいの時だった。
一緒に住んでいた友達が中国を旅していて、
「菊地もこいよ」と誘うもんだから気づいたら僕は香港の空港に降り立っていた。

(そういえば当時友人は指差し単語帳のようなものでひたすら「私は日本人です」を練習していて、得意げに僕にそれを披露していたのを今まさに思い出してまた笑った
なぜ彼はひたすら自己紹介することに情熱を注いだのか。
道ゆく人に私は日本人ですと言って、「はぁ。。。」以外の何を求めたのであろうか。)

それはさておき、空港に着いた僕は待ち伏せしていた友人から熱烈な歓迎を受けた。

なんと友人は見ず知らずのその辺を歩いていた人iPadを渡して、「今から友達が日本から来るから再会のシーンを動画に残してほしい」と頼み、
空港の到着ゲートで「世界の中心で愛を叫ぶ」みたいなシーンを演出して僕にドン引きされていた。

もっと言えば、その動画は後日、ウルフルズの「バンザーイ」のBGM付きで編集され送られてきて、今もなお僕のPCの片隅にひっそりと佇んでいる。

名も知らぬ道ゆく人、協力してくれてありがとう。もしこれを読んでたら連絡して欲しい。
コーヒーあげます。

そんなこんなで友人との再会を果たして、僕らは香港のバックパッカー御用達の宿、
重慶大厦(チョンキンマンション)に住み着きながら日々過ごしていた。

重慶大厦を初めて聞いた人はぜひググってほしいのだけれど、
当時そこはカオスという言葉がこれ以上ないくらい似合うほど、混沌としていた。

入り口は街中にある雑居ビルのようなものだったが、なんせ建物がでかい。
何階建てかもわからないほどとにかくデカく、階によって広さや大きさが違うような気もするし、妙に立体的で、外観だけで何階建てかを判断することは到底できやしない。

入り口にはなぜか黒人の客引きがおり、よくわからんけど中に入るように誘導してくる。
上野のケバブ屋並の強引さ


入るとそこは露店が所狭しと並び、人でごった返すフロアもあれば、不気味なくらい人気のないフロアがあり、そこでは明らかに手を出してはならないアングラの世界の入り口がひっそりと誰かが来るのを待っていた。
全フロアに共通するのはただ、ひたすらに暗いということだった。

その重慶大厦うちの数フロアは宿泊可能となっており、ありえないほど安く、アングラな旅人御用達のホテルになっていた。1人1000円くらいで泊まれた。

僕らが泊まった部屋はびっくりするぐらい狭く、扉を開けるとベットに直撃して半分しか開かない。くつろげるスペースなんかなく、ベットから一歩行くとそこはもうバスルームだった。換気も悪く、火事や強盗が来たら死ぬしかない、とんでもないところだったが、なぜか毎日楽しかった。

ちなみに当時の様子を録画していたのでそのキャプチャ

指差しているところが唯一のフリースペーズ。
目の前がトイレ。

 

そんなこんなで香港の100万ドルの夜景を見に行って、そこへそこら辺のマックで買ったハンバーガーを持っていって、100万ドルのハンバーガーだとか言って遊んでいた。
そんなこんなで毎日楽しかった。

。。

。。。

。。。。とはいえ、やっぱり僕も男。ムズムズしてくる。
そして友人も同じだった。

そう。
マカオでギャンブルがしたい。

あの深夜特急の空気を僕らも嗅ぎたい。気づいたら二人でマカオへのルートを調べ上げ、
翌日には香港へ渡る船着場へ向かっていた。

マカオは島全体がカジノらしいぞ。ラスベガスよりも規模がでかいらしいぞ。
とあるホテルには売春専用のフロアがあるらしいぞ。
朝から晩までギャンブル天国らしいぞ。

そんな噂を耳にして僕たちはワクワクテカテカしながら
香港はマカオに向かったのだった。

 

多分続く。

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