キャリアコンサルタントと不登校
僕は産業カウンセラー、キャリアコンサルタントとして不登校支援に関わってきました。
ところで「産業カウンセラー」は何となく「カウンセラーに近いものなのかな?」とイメージができると思います。
臨床心理士、公認心理師のように心理療法や性格検査などはできませんが(これは僕だけか?)、カウンセリングはある程度できます。
じゃあ、「キャリアコンサルタント」って何者か?という話ですが、
大学や短大、専門学校のキャリアセンターや就職課にいたり、ハローワークで職業訓練を受ける時に面談などを行い、集中的な就職活動の支援をするのがキャリアコンサルタントです。
こう書くと「キャリアコンサルタントは就職活動の支援をする人」というイメージになると思います。
メインは就職活動の支援ですが、僕らキャリアコンサルタントは仕事のことだけでなく、キャリア(人生)の進む方向を決めていくお手伝いを幅広く手掛けています。そして僕が普段居る所は生活保護担当課。
そう、僕は普段は生活保護を受けている人、その世帯の人の就労支援をするキャリアコンサルタントです。
生活保護については皆さん色々思うところがあるでしょうが、ここではそのことに触れません。ただ、この仕事をしていて痛感するのは、これまでしっかりとしたキャリアプランを持っておらず、その場しのぎで就職と退職を繰り返したり簡単に仕事を放棄する方が多い。
だから就職に必要な知識やスキルといった必要な能力が備わっておらず、こちらも支援が大変になるわけで正直厳しい仕事です。
キャリアコンサルタントの不登校支援とは
そんな僕がひょんなことから不登校支援に関わることになりました。
元々支援の仕事をしていることと、
中高生の若いうちから将来(キャリア)のことを少しずつ考えないと後々自分が苦しむことになってしまうため、その予防線を張るようなこともやってみたいと思い、不登校支援にも関わるようになりました。
不登校から引きこもりになってしまう人もいますので、僕が不登校支援で一番大切にしていることはしっかりとコミュニケーションを取り、僕を通じて社会との接点を完全に失わないようにすることです。
今はSNSやオンラインゲームなどで人とつながりを持つことができる世の中ですが、現実世界では家族などごく一部の人としか社会とつながっていない。もし家族が社会との接点を失っていれば社会との断絶状態になる…。
これはキャリアを作っていく上で大きな痛手となります。僕らキャリアコンサルタントは「学生は自分の知っている仕事しか知らない。」と考えていることが多いです。
つまり、保護者をメインに家族や親戚などがしている仕事しかイメージできないのです。学校に行っていても「教師」という仕事しか知らないでしょう。
そこで僕らキャリアコンサルタントの登場です。ライフプラン、マネープランも含めて生徒がキャリアを作っていくことを支援しますが、こういう話ばかりしていると生徒も嫌になります。
だから僕がやっていることはまずは関係を作ること。
ゲームが好きならゲームから入っていくし、普段はスマホやゲーム機しか使っていないからタブレットやパソコンに興味津々な子どももいます。
パソコンがある家庭では保護者の了解を得た上でパソコンを使用。
僕がワードやエクセルで文書作成や、表計算を行ったり、ネットで検索して必要な情報を探し当てるとするとみんな一目置きます。
生徒はメモリーなどが大容量のパソコンでゲームをしたがりますが、パソコンはそれがメインではないことを教えます。
自信満々に「パソコンなんて簡単に使える。」と言っていた生徒にパソコンの操作をさせると意外に何もできない…。ここでパソコンはゲームだけでなく、勉強や仕事に使うことができることを教え、少しずつ操作を教えます。
当然中学校3年生ともなると進路も気になりだします。そこでほとんどの生徒がキャリアについて真剣に考えるようになるので、仕事だけでなく、将来どんな自分になりたいかを考えるように働きかけます。
そうするとなりたい自分になるための手段としての高校進学なども真剣に考えるようになり、ここから徐々に学校に復帰できる生徒も出てきます。
学校に復帰できなくても担任などとコンタクトを取るようになり、コミュニケーション能力が回復してきます。
そして、最終的に自分の進路は自分で決めます。あくまでも僕がするのは情報提供だけ。もちろんある程度照準が定まったらそれに必要な学習支援も当然行います。
不登校の支援をしている支援者の中には学校を全否定する人も少なからずいます。
僕個人的にはその考えには各論賛成、総論反対の立場です。
よくよく見ていると支援を必要としている生徒のキャリアを無視した方針の支援団体も多いですし、きちんと別のキャリアの選択肢を見せることができるかどうか不確実な支援団体も多いような気がします。
本当の不登校支援は生徒のキャリアを考え、あらゆる外的資源や内的資源を駆使し、成長した時に「あの時は苦しかったけど、苦しんだからこそ今がある。」と考えられるようにするものではないかと日々考えている僕です。
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