ディズニーランドとカジノ。

スポンサーリンク
大いなるひとりごと

ディズニーランドに行ってミッキーに会わないことなんてあるのか。
いや、ない。

ドラえもんにひみつ道具をねだらないことなんてあるのか。
いや、ない。

空気を吸ったのならあとは吐くしかない。

だから僕らはマカオへ降り立った。

香港に行ったのならばそれは間違いなくカジノに行かなくてはならない。
それは自然の摂理。

水は高いところから低いところへ流れ、
火に燃料を与えると燃える。
そのくらい自明なのだ。僕らがカジノにお金をつぎ込むことは。

・・・


僕の記憶だとマカオは暑かった気がするし、湿気もあった。
到着した時、お世辞でもマカオでは居心地の良さは感じなかった。
なんだ。こんなものかと思った。

ところが、船着場から送迎バスに乗った途端そのがっかりは一気に吹き飛びディズニーよりも夢の国が広がった。ミッキー?そこら中にいるじゃないか!

あの光景を言葉にできるほど
僕はまだ言葉を知らないなと思わせるほどの「世界」がそこにあった。

王宮が建てられ、川が流れ、船がホテル内を通り、滝が水面から上空へ向かって飛んでいた。

そして
街を歩けば至る所から阿鼻叫喚、夢と絶望の綱渡り。目の前360度全てがそんな世界だった。

自分が蟻となって、ディズニーランドに落とされた感覚に近い。

どこに入ってもカジノ。
どこにいても金の音がする。どこを見ても、巨大なオブジェ。
深夜特急で見るようなアングラ感はなりを潜めて、当時はもう立派なカジノの国だった。

はぐれたら二度と再会はできないであろう広さのカジノ内を僕らは歩いた。
歩いても歩いても、スロットの音や机をバンバン叩く音は鳴り止まず、
時間の感覚もわからなくなった。


そして、来た。
勝負の時。

パチンコとか競馬とかギャンブル好きな人あるあるだけど
会場入りするまでが一番ワクワクして楽しいよね。待ってるのは結局のところ
後悔だけど。


僕らはまず深夜特急に習って、大小を遊ぶことにした。

大小とはこれまた原作読んで欲しいのだけれど、簡単に言えば3つのサイコロの出目を予測するギャンブルだ。
テーブルの真ん中の台にサイコロが3つ入った透明のプラスチックのカップが置いてある。

そのカップが台が振動してカシャ、カシャ、と小気味良い音を鳴らしてサイコロが数回飛び
回り、あるものにとっては至福、あるいは絶望の目が提示され、
その直後歓声、あるいはため息がそのテーブルを包むのだ。
チンチロに似たようなシンプルかつ奥行きがある(ように見えるが結局は運ゲー)
ギャンブルだ。

気付いたら僕らは夜通し大小を遊んだ。

深夜1時を回った頃だろうか。僕と友人はお互いに少しずつ負けていた。
旅行中の身分で、ただでさえ少ない資金をさらに減らしてしまったことに僕は若干の焦りを感じていたが、友達はそうではなかった。

「菊地、俺、見つけた」
熱心に出目を記録していた友達不意に口を開いた。

「何を?」

「必勝法」
僕の友人はそう言ってニヤリと笑った。
ライアーゲームの名台詞をここまでコピーできる人間がいるのかという衝撃と
何言ってんだこいつという気持ちでちょっと笑った。

「え?まじ?教えてよ」
と聞いても

「まだ、検証期間だから。もうちょっと待って」
と、友人はまたカップを凝視する。

ならまだ見つけてないじゃんという気持ちを抑えながら僕は待つことにした。


その後数回、サイコロの目が出ると勝った負けたを問わず、
友人は真剣な顔で、ふんふん、と頷きまたメモをとる。
「やはりな」と納得したような顔していた。

僕は少し、興味が湧いた。

。。。


そしてその4時間後

友人は僕からお金を借りていた。
帰りの飛行機までの滞在日を全てスっていたのだ。
友人の仮説はいつまでも証明される事はなかった。


僕というと夜通しでギャンブルをやって頭がおかしくなってきた朝方
流石にサイコロの目でお金がなくなっていく理不尽に耐えられず
ちゃんと勉強していたブラックジャックで少し遊ぶことにした。
(カジノ側とプレイヤー側へ二枚のトランプが配られ、合計が21に近い方が勝ち。
絵札は全て10とカウントされる。そんなゲーム。ちなみにこれは運ゲーではなくて戦略があり、現にプロもいるギャンブル種目である。)

ちょこちょこ繰り返す中で、ここだ!というタイミングがあった。確かにあったのだ。
その時ありったけのお金をベットして、カードが配られる。

変な確信があった。
自分の一枚目のカードは絵札。
ディーラーは確か7とか8とか。
勝率は十分ある。

僕へ配られた二枚目のカードも絵札だった。勝ちを確信した。
ほぼ全ての財産が倍になったことで、僕はマカオ滞在の費用を全て稼ぐことができた。

今思えば、これから始まった僕の家事の旅の中で唯一勝った記憶となる

 

マカオには回遊魚ならぬ回遊女がいる。

あるホテル(確か名前はリスボンだったかな)の上のフロアには
売春専用のフロアがあるという噂を聞きつけた僕らはとりあえず行ってみることにした。


このホテルの形は面白く、
フロア全体は円柱形で、真ん中に客室が並び、そこを通路が囲うような形だった。

要はドーナツの空洞部分が客室エリアで、食べる部分が通路である。
(ちなみにドーナツは穴が空いているからといって0カロリーではない)

夜の女性は、その通路をくるくると歩き続け、客を見つけるとそのまま内側の部屋へ消えていく。
ただ、お客が見つからない限りはずっとその廊下をくるくると歩き回ることから回遊女と言われているらしい。
水族館の水槽を泳ぐ魚のように回遊するのだ。

僕らもそこへ行って歩いてみると、確かに数人の女性が歩いていた。
最初こそ、なんだか後ろめたさもあり、

「あ、ぼくらは偶然迷い込んだだけで、そういうフロアだとは知りませんよ」
感をアピールしていたが、
当然、二週目から同じ人とすれ違うことになるわけで、非常に後味の悪さを感じた。
もちろん僕らは客室の中に消えることもなく、長居することもなくさっさとその場を離れた。


もう一つ面白いことがあった。

通貨だ。

マカオはマカオの通貨「パタカ」が流通している。
一方、そこから船ですぐそばの香港は「香港ドル」を使用しており、異なる通貨だ。
にもかかわらず、マカオでは香港ドルが当たり前のように使える。両替する必要がないのだ。

こりゃ便利と思っていたが、なんと、香港ではパタカを使用する事はできないのだ。

つまり、香港ドルからパタカの一方通行で、パタカから香港ドルへは両替を通さなくてはならない。不思議だ。
当然のことながら両替の手数料などが取られてしまうため、
カジノで一気に勝ったとしてもやっぱりそれは基本的にマカオの中で使用しなければならない。

お互いに両替するならわかるが、一方通行の通貨は初めてだったので、なんだか妙に記憶に残っている。

マカオ、香港は本当に面白かった。南米や東南アジアのような圧倒される景色や、日本と全く異なる文化に出会える場所ではないが、それでも些細な違和感がとても面白かった。

その後僕らは中国へ渡った。そこでもまた僕らはたくさん笑った。

堂々と立ちションする大人たち、
あまりに辛い料理。初めてみる言語なのに、何となく漢字から推測できる面白さ。
一方で、中国と一口で言ってもあまりに広く、中国に行ったことがあるという言葉には何の意味も持たないなと痛感する日々だった。

ともあれ、僕のこの一連の旅の記憶の断片のフィルムは中国に渡って、偽物しか売らないと堂々と銘打っている偽物専門デパートで買い物したことを最後に途切れている。

ここからはまた思い出した時にでも書こうと思う。

ちなみに一番二人で笑ったのはこれだ。

それなりって何やねん。

 

コメント