「ひまじんは、いかにして『ひまじん』になったのかその誕生ストーリー」 その2

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パナマ暮らし

f:id:tokotokok-k:20190209124252j:plain(写真は特に意味ありません)

 

「なんというか心の糸がプツンと切れたような、そんな気持ちになりました」

(記事内から抜粋)

 

 

こんにちはおきくです。

 

今日も前回(第一話)
に引き続き


あの中南米で暇されている
「ひまじん」さんにお話を伺いたいと思います。

 

様々な苦難がありつつもそれをモチベーションに変え生きてきた彼。
しかし、そんな彼がなぜ、今こうなってしまったのか。

 

ついにその真相に迫ります。

 

実録ドキュメンタリー。
ひまじんはいかにして「ひまじんに」なったのか
真相編

 

 (実際には真相は明らかになりません。俗にいう詐欺です)

 

お楽しみください。

 

_______________

 

2月某日、都内某所のあるカフェに彼は少し遅れてやってきた。

 

「どうも。遅れてすいません」

 

ーーいえ、こちらこそわざわざご足労いただきありがとうございます。

 

 

「いえ、いいんですよ。暇なんで。
あ、すいません。アイスコーヒーください。ブラックで」

 

 

ーーコーヒーお好きなんですか?

 

「えぇ。パナマで暇だったときコーヒー手作りしてました」

 

ーー手作り、ですか・・。

 

「えぇ。二度とやりたくないですけどね」

 

 

・・さて、せっかくで恐縮なんですが
お話の続き、よろしいでしょうか。

 

 

「えぇ、もちろんです。
・・・・ええと、どこまで話しましたっけ?」

 

運ばれてきたコーヒーに口をつけ、
ポケットからココアシガレットを取り出す。

 

ーー相方さんと喧嘩した、というところまでです。

 

「あーそうでした。
そこからがね、一番大変でした。
でも同時に僕のボランティア生活の中で一番充実していた時期でもありました」

 

ーーその時のことを詳しく話していただいてもいいですか?

 

 

「えぇ。とにかくその1ヶ月間、
僕は日本のように授業案、板書計画をつくり、全授業を担当しました。
またその記録をまとめ、データ化、冊子にして相方に渡していました。」

 

ーー冊子にまで、ですか?

 

「えぇ、やっぱり僕が授業をするだけでは何にも変わらないし、
帰国したら何も残らないじゃないですか。
だから、僕がいなくても少なくとも僕がやった授業はできるように
しておく必要があると感じてたからです。」

 

彼は少し誇らしげにこう語る

 

ーーなるほど。
 しかし、そのような毎日を過ごされていてどうしてその・・
 失礼ですが、「ひまじん」になってしまったのでしょうか?

・・・ぽりぽり(ココアシガレットを噛む音)

 

「そうですね、それを説明するためにもう少し
 忙しかった日のことを話していいですか?」

 

ーーもちろんです。是非お聞かせください。

 

「僕はその活動を始め出した6月ー7月を算数月間と位置付けて
 とにかくいろんな活動を詰め込んだんです
 例えば、以前セミナーのお手伝いをさせていただいた
 先輩隊員のセミナーに相方、そして、やる気のある同僚を連れて行って3日間、
 日本の教授法を学んでもらったりしてました。」

 

ーーなるほど。それは彼らにとっていい経験になったでしょうね。

 

「えぇ。おそらくそうだと思います
ただ、僕の中には同僚が学ぶだけでは意味がないとも
同時に思っていたんです。」

 

ーーというと?

 

こう問うと、ひまじんさんはしばしの沈黙の後、
 堰を切ったように話し出した。

 

「つまり、セミナーで学んだものを自分たちで消化し、
日々の活動に組み込んで初めて意味がある、と考えてました。

そこで自分たちの学校でもセミナーを開こうとしたんです。
でもそれはよくあるような
日本人が現地の先生たちに指導するのではなく、
日本の考えを学んだ現地の先生が、
他の先生たちにそれを伝えていく。
そういう形のセミナーが必要だと考えていたのです。

そしてそれこそが
『僕たちボランティアの目指すべき活動の形』だと考えました。

 

話し方にだんだん熱が帯びていく。

 

ーー具体的にはどのようなことをされたんでしょうか?

 

「自分たちの学校に近隣の学校の先生を呼び、
相方や、一緒にセミナーで勉強した同僚たちが
講師として何を学んだか、それをどう授業の中で
活かしていくか、それをテーマに2日間のセミナーを開催しました」

 

一息だけ入れて
 また、話し出す。

 

「また、それだけではなく日本でいう教育学部生にあたる
パナマの学生たちをを自校に呼んでちょっとした遊びをやってもらったり
実際の授業を見学してもらったりと、教育の現場を知ってもらう機会も作りました」

 

(自校で行なったセミナーの冊子。全てひまじんさんが作ったという。
本人曰く、結構気に入ってるそうだ。)

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(他校の先生に向けて模擬授業を行なっているひまじんさんの同僚。)

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ーーなんだか活動がものすごく盛りだくさんですね。

 

「えぇ、この国の特徴として、
鉄は熱い時に叩け、じゃないですけど時間が経つと忘れちゃうんですよ。
なので、一気に詰め込みました。

 

それでも活動の主軸をしっかりと
見据えていたつもりです。つまり、

他所のセミナーで『自分たちが学び』

自校開催のセミナーで『周りに広げ』

教育学部生をに出会い『未来に繋げる』

この3つを主軸に約1、2ヶ月間、全力投球しました」

 

一気に話し終え
ひまじんさんの息はすこし荒れていた。
よっぽど彼の中で大きな経験だったのだろうか。

 

気づいたらカップの中のコーヒーは冷めていた。

 

・・・

と思ったら最初からアイスコーヒーでした。
 この場を借りて謝罪いたします。

 

 

(参観に来た教育学部生と打ち合わせをしているひまじんさん。学生たちも真剣に話を聞いている。ひまじんさん曰く、この時期にメキメキとスペイン語力が伸びたという)f:id:tokotokok-k:20180731081704j:plain

 

(学部生が子どもの目線に降り、足し算を手伝っている姿。こんな姿は滅多に見れず、これを見た時、ひまじんさんは思わずパナマの教育は明るいと感じたそうです。)

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ーーいやぁ、すごいですね。なんだかものすごく充実してますね。

  活躍されているみたいじゃないですか。

 

「『その時までは』、、、ですけどね。」

 

今までの熱が嘘のように、ふっと消えて、急に寂しげな静寂が流れた。

 

できることならココアシガレットを差し出したかったが
あいにくポケットにはメントスしかなかった。
グレープ味。スーパーで88円だった。

 

ーーなにか、あったんですか?
   その、トラブル、とか?

 

聞いてはいけないような気がしたが、
聞かないという選択肢は僕の中にはなかった。

 

「いえ、その逆です。順風満帆だったんです
むしろ良すぎたくらいに、、、」

 

ーーではなぜ?

 

少しだけ寂しそうな顔をして

彼はこう続けた。

 

「算数月間を終えて、相方の成長を実感していたそんな時、
JICAの出張で学校を2、3日離れなくてはならなかったんです。
そのため、週明けの月曜日の授業準備の話を
することができなかったんです」

 

ーーなるほど、、それで月曜日に行ったら散々だったと・・?

 

「いえ、逆です。完璧だったんです。授業案を準備していて、
自分で作ってきた教材を黒板に貼って、授業展開もしっかりとできてました」

 

ーーえ!?それは良かったじゃないですか
   文句ないじゃないですか!

 

僕のテンションとは正反対に、
彼の口調はひどく冷静だった。

 

「でも、僕たちボランティアにとって

『文句がない』

ということは自分の仕事の終わりを意味するんですよ」

 

 

ーー・・あ・・・

 

「いや嬉しかったですよ。本当に
ここだけの話、授業参観中に少しだけ涙目にもなりました。

『ようやくここまできたんだな』って

でもそれと同時に感じたんです。
『あぁ、もう僕にできることはないな』と」

 

 

ーーそんなことは・・・

 

「いえ、そうだったんです。
少なくとも僕にとっては。
つまり、僕は自分の中で無意識にゴールを決めてしまっていたんです。

ここまで行こうって。
それを目標に頑張っていた。しかしそれを達成してしまった時、

なんというか心の糸がプツンと切れたような、そんな気持ちになりました」

 

ーーそう・・・だったんですか。

 

「そういうものはやっぱり伝わるもので
何日か過ぎた時、校長に呼び出しくらったんですよ
最近どうしたって。だから僕はありのままに現状を話したんです。
もう僕にできることはないって

 

 

ーーなるほど。つまりは、仕事をやりきってモチベーションが下がり、「ひまじん」に  なったと?

 

 

「いえ、僕のモチベーションが下がったのは、
 相方が原因でした」

 

ーーなにがあったのでしょうか?

 

「ぼく、クビになったんですよ」

 

彼は最後のココアシガレットを口にほおると、
その空き箱をぐしゃっと潰した。その音がやけに喫茶店に響いた。

 

 

 

次回

本当の最終回。

 

クビになった男、そして「ひまじん」に。

 

乞うご期待。

 

ごめんなさいい!!
だって3000文字超えちゃったんだもん。

 

次で無理やり終わらせるから!

ね!

 

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