[不登校] 教師として子どもと「向き合う」ということ

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*プロフィール
 
 私は、大阪市内の小学校で教諭として働く武富と申します。
 前任校で5年働き、教員6年目の今年度より別の小学校に転勤となりました。今回の転勤先での教師生活を通して、私が教師として改めて大切にしたいと感じた教育観についてお話しできればと思います。

 

 
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教師としてできること

 初めての転勤で、緊張しながら学校へあいさつに行くと、学校長が開口一番、「武富さんには何とか五年生をもってもらいたいです」と。
 神妙な面持ちのまま続けて

四年生のときに学年崩壊をしています。窓ガラスが毎日割れたり、けんかや暴力事件が絶えなかったり、授業なんて半年ほど全く成り立っていなかったり。保護者が毎日怒鳴り込んでくるような学年です。」

学年の実態を知り、「ぼくには到底できません。」と、正直に伝えました。「お気持ちはわかりますが、もう武富さんしかいません」と言われ、5年を担任することになりました。
 
 今年度はコロナ禍で、なかなか例年通りに子どもたちと関わることに難しさはあったものの、あいさつや何気ない会話などを通して、子どもたちの声にしっかり耳を傾けたり、毎日子どもたちの良い行動を全体の場で褒めたりすることで、徐々に関係を築いていきました。
また、保護者とも密に連絡を取り、学校でのがんばりや抱えている課題などについて伝え続けました。

 すると、7月の個人懇談では、多くの保護者から「先生が担任になってうちの子は変わりました。」「学校での授業や楽しかった活動などを話してくれるようになりました」などと嬉しい言葉をかけていただけるようになりました。2学期も子どもたちは運動会や作品展など、様々な行事に精一杯取り組むことができ、ほかの先生からも「5年生、変わりましたね。」と声をかけていただけるようになりました。

 しかし、学級内の1人の男の子O君の対応だけは、2学期に入っても、どうしてもうまくいきませんでした。

その子は、授業中の立ち歩き、「殺すぞ」「死ね」などの暴言、教室の窓から飛び降りようとする自殺未遂など、迷惑・危険行為が絶えない子でした。
 2学期半ばから毎日、教室に教師を3人配備したり、教室の窓が10センチしか開かないようロックをかけたりなど、とにかく命だけは守らないと、という思いで対応し続けました。当然保護者にも毎日のように連絡を取りました。しかし、保護者は地元で人気の料理店を夫婦2人で切り盛りしており、帰宅は毎日深夜1時頃。子供の様子など、知るはずもありません。

 何とか現状を打開したく、保護者が電話に出やすいタイミングを見つけようと、午前中やお店の開店前に電話をかけ続けました。当初は「忙しいので」「家では何も問題ないです」といった応対でした。
 しかし、状況をありのまま伝える中で、少しずつ学校での様子に耳を傾けてくださるようになりました。学校にも来校してもらい、直接お顔を見て話をする場もつくりました。
「時間はなかなかありませんが、本人とも話してみます。」「よくないかもしれませんが、迷惑行為や危険な行為の連絡が先生からなかった日は100円あげるようにします。」とお父さんが言ってくれ、子どもと向き合おうとするお父さんの姿がみられました。

 今はほんの少しずつですが、ノートを取るようになったり、リコーダーを演奏したりするなど、落ち着きを感じる場面が見えてきたように思います。
今年度を振り返り、教師として、また人間として大切なことは何かを考え、以下の3点にまとめました。

教師として、忘れてはいけないこと

*子どもとまっすぐに向き合う。

1点目は、「とにかく誠実に」ということです。あいさつはもちろん、子どもたちの「先生あのなー」「先生聞いてー」という声に、どれだけ耳を傾けて、彼らに寄り添うことができるかが大切だと思います。
学校現場は常に慌ただしく忙しいです。それでも「どうしたの?」と自分の仕事の手を止め、誠実に関わっていくことが子どもたちとの信頼関係を築くことにつながると思います。その信頼関係が、学級経営の基盤となることは言うまでもありません。

*具体的に褒める

 2点目は、「褒める」ことです。「がんばったね」や「すごい」のように、ただ漠然と褒めるのではありません。例えば、教室の掃き掃除を最後まで頑張ってくれた子がいたら、「〇〇さんのおかげで教室の床がピカピカやわ、ありがとう」や「そうやって最後まで取り組む姿勢が素晴らしい。みんなのお手本やし先生も見習うわ」などのように、具体的に褒めることが重要だと思います。このように褒めることで、どの行動が「良い」または「素晴らしい」行動なのかが明確になり、子どもたちのより良い行動につながると思います。

*保護者との連携

 3点目は、保護者との連携です。保護者は学校での子どもの様子は、ほとんどご存知ありません。それは子どもから聞く話しか情報源がないためです。そのため「どんなことを頑張っているのか」「どんなことに課題があるのか」については、日々ていねいに伝えていくことが必要になります。
 学校でのがんばりを伝えると、保護者は当然喜ばれます。それだけではなく、友だちとのトラブルや体調の変化、学習面での課題など、どんな小さなことでも連絡することが保護者と担任との心をつなぐと考えます。常日頃より連携を取ることで、保護者とよりよい関係を築くことができ、それが子どもの安心にもつながると思います。
こうした点を今後も大切にしながら、目の前の子どもたちと誠実に関わっていきたいと思います。

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